小学生のとき新学期になると先生が持っていた教科書にあこがれましたね。
自分が手にしている、もらったばかりの真(ま)新しい教科書じゃなくて、先生のは何年も使い込んだために小口(こぐち)が変色し、表紙なんかも経年変化で特有の色あせぐあいで、それでいて大切に扱(あつか)われているのが感じられる落ち着いた風合いをしていて、自分の教科書も早くあんなふうに使いこみ感のある質感を出したくて、指にツバをつけてわざと小口をこっすってみたりしましたが、そんな浅はかな方法ではとても本物の時間経過の風合いなどかもし出せるワケもなく、けっきょく1年たってみると、どこか破(やぶ)れていたり、落書きしたりして、先生の教科書とはほど遠い、情けないほど小学生っぽい傷みかたをした教科書になってしまってました。
私がまだ18~19歳のころ、ふんぱつして買った岩波書店の国語辞典「広辞苑」(第2版補訂版)は、今気がついてみると、小口は茶色に変色し、使い過ぎて破れそうになった裏表紙は布製のテープで補強したりしていて、小学生の自分が目にしたら、ウットリしてしまうだろうと思えるくらい本物の経年変化があちこちに色濃く刻印されたものになってます。
購入してから40年以上もたってるわけで、長いようで、でもいま思うとその年月もあっという間だったような気がします。